アメリカはなんとかなっても、日本のような国が一番ひどい目にあうのではなかろうか? 「知能低下の人類史」を読んで 4


エドワード・ダットン、マイケル・A・ウドリー・オブ・メニー著「知能低下の人類史: 忍び寄る現代文明クライシス(春秋社)の紹介。


ここまで3回にわたり、産業革命以降、人類の遺伝的な劣化によって知能が低下してきたらしという内容を紹介してきた。
(1回目から読みたい方はこちらから https://fire-earlyretire.com/blog-entry-793.html
では今後人類はどのような運命をたどるのか?
著者らの見解は極めて悲観的だ。

p258~
文明の崩壊を回避するために我々ができることは、現実的にはまったく存在しないように思われる。(中略)。
もし文明をどこかに移動させたりしても、それは本当に少数にしか関係しないことであり、彼らにしても厳しい状況を生き抜く必要がある。我々のほとんどができることは、間近に迫る冬に備えて、これまでの文明がつくり出した知識を安全に保管することしかない。最終的には、冬が去れば春と夏が来る。現代文明がこれだけ進んだことからすれば、おそらく現在から未来への知識の贈り物があれば、次のルネッサンスで人類はさらに高みに至るだろう。しかし我々、あなたや私たちは、そのずっと前にいなくなる。もう冬が来て、だんだんと寒くなりつつある。暖かい冬を着込むのがよいだろう。

なんと本書はここで終わってしまう。
当分の間、人類の文明が上向くことはない。将来、恐らくは再度の淘汰によって人類が再び高い知能を取り戻すときのために、今ある知識や技術をしっかりと保管しておこう。
そして我々自身がその恩恵に預かることはない、というのが著者らの結論のようだ。
あまりにも救いがない。

この本の訴える「人類の知能低下」については納得した。多くの科学データが紹介されているし、筋も通っている。しかし人類がこのまま冬の時代を迎えるとの著者らの予想に対しては、少し反論してみたい。
というのも世界規模でみた場合、近年、貧困が減り、多くの人に自分の能力を発揮する機会が与えられる時代になったことが、人類にとって大きな救いになるように思えるのだ。
優秀な知能をもった人材が、たとえば東南アジアのさほど豊かでない国の、労働者階級家庭で生まれたと想像しよう。一昔前ならろくに教育をうける機会もないままブルーカラーの仕事につくか、運がよくても地元で取り立てられ、教師や官吏になる程度だったはずだ。
それが今では大学に進学し、先進国に留学することもできる。世界の最先端のテクノロジーに触れ、それを推し進める立場にもなりうる時代環境になったわけだ。
それにそもそも、世界の人口は増え続けている。そう考えれば、知能が高い人は率としては減ったとしても、絶対数としては増加し、かつ台頭しやすい状況になったことになる。
そして科学分野において、人類はすでにかなりの蓄積がある。一から創り上げるのではなく、これらを活用し、よりよいものに変えていくだけなら、これからの人類にとってもさほど難しくはないのではなかろうか?
とはいえ残念ながら、政治分野では厳しいかもしれない。
政治家は国民の鏡。国民の平均知能が低下すれば、当然国民によって選ばれる政治家のレベルも低下することになる。
「政治の質の低下」や「政治家の小粒化」は世界中で議論されているが、僕は今まで、その多くは昔の政治への過ぎた評価やノスタルジーによるものと感じてきた。
しかし人類の知能が産業革命以降下がり続けているのであれば、政治の質は低下して当然ということになる。ロシアのウクライナ侵攻といった愚かな行為が、今後はさらに増えるのかもしれない。
さらにこの現象を国別で考えると、アメリカはさらなる発展が期待しやすい。出生率はまだ高いし、世界中から優秀な頭脳が集まっているのだから、イノベーションの下地は常に整っている。
逆に日本はただでさえ出生率が低いのに加え、海外の優秀な学生にとって、留学先としての魅力が年々弱まっている。政治家、国民の平均的なレベル低下によって厳しさを増す国際情勢の中、日本はその地位を失っていく一方ということになりかねない。
解決策としては「優秀な人材の出産率の上昇」か「海外からの優秀な頭脳の受け入れ」しかないのだが、日本の場合どちらにも消極的だ。
いやはや、難しい。

もちろん、「だから産業革命以前のように弱い遺伝子が淘汰される世界を!」とはつゆとも思わない。平和で平等なほうがいいに決まっている。
しかし科学はなんとかなっても政治はどうにもならないとなると、民主主義に変わる政策決定手段について、人類は本気で検討する必要があるのかも、と呻きつつ今回のシリーズを終える。
後味の悪い話にお付き合いいただき、感謝。




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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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