「FIREを達成した者たちは理念の普及を精力的に行っている」とか勝手に決めないでほしいなあ


今日紹介するのは橘玲著「裏道を行けーディストピア世界をHACKする(講談社現代新書)」。


橘氏の本は好きでよく読むし、本ブログでも何度か紹介している。今回も橘節満載で楽しく読めた。
この本では最終章「世界をHACKせよーどうしたら残酷な現実を生き抜けるか?」で本ブログの主テーマのひとつであるFIREに触れているので、その部分を中心に紹介する。

p237~
FIREの目標は、お金を使わない質素な生活をしてできるだけ多く貯蓄し、投資によって金融資産を増やしていくことだ。(中略)
FIREの基本は「4%ルール」で、年間生活費を25倍した金融資産を株式と債券に分散投資すれば、毎年取り崩しても30年暮らしていける確率が95%だという。毎年の生活費が4万ドル(約440万円)なら、目標金額はそれを25倍した100万ドル(約1億1000万円)で、ミリオネアがひとつの目安になるだろう。
(中略)
自由とは、会社(給料)や家庭(夫)、国家(福祉)などに依存せずに自分の人生を選択できることだ。“No Money, No Freedom(お金がなければ自由もない)というFI(経済的独立)の徹底したリアリズムは大きな影響力をもつようになり、いまや世界中の多くの若者たちが倹約と資産運用によって「自由な人生」を手に入れようとしている。

FIREの理念が簡潔にまとめられており、僕に異論はない。ただし、たまに勘違いされるので書いておくが、僕がアーリーリタイアしたのはそのような生き方に共鳴したからではい。
僕がアーリーリタイアした2016年、自著「幸せの確率―あなたにもできる!アーリーリタイアのすすめ」を上梓した2017年には、FIREなる言葉は日本でほとんど使われていなかった思う。つまり、FIREなぞ僕は知らなかった。
原稿を出版してもらうために出版社巡りをした際、多くの出版社から「アーリーリタイアになんか興味をもつ人はいない。つまり市場がない」と断わられた。当時はまだそんな状況だったのだ。
最終的にはなんとか形になったものの、原稿を出版にもっていくのは本当に大変だった。近い将来、アーリーリタイア的な行き方にスポットが当たるのでは、と感じていた人は当時の日本にはあまりいなかったようだ。
そして出版社に時代を読む能力がないことが、日本で諸外国以上に出版不況が深刻である主因であるように思える。
話が逸れた。本からの引用に戻る。

p239~
FIREのもうひとつの目標がRE(早期退職)だが、これは悠々自適の生活をすることでは(おそらく)ない。
経済学では、ひとはみな「人的資本」をもっており、それを労働市場に投資して収入(給料)を得ていると考える。ほとんどのひとにとって人的資本こそが金融資本(富)の源泉なのだから、早期退職(RE)で人的資本をゼロにするのは人生設計としてバカげている。
(中略)
FIREはプアホワイトのような「貧困」ではないが、必死に倹約して経済的独立=自由を手に入れたのに、なぜ「失業者」にならなければならないのか。現代社会では、職業的な成功こそがもっとも確実な自己実現への道だというのに。
早期退職(失業)はもはや、魅力的な人生の目標ではなくなっている。こうしてFIREは、「経済的に独立して、好きな仕事(社会活動)を通して大きな評判を手に入れる」という運動へと変わっていくだろう。実際、FIREを達成した者たちは、自らがインフルエンサーとなったこの理念の普及を精力的に行っている。


さて、残念ながらこの辺は橘氏の著書でよく見られる「非論理的な決めつけ」が多い。
前段では、

世界中の多くの若者たちが倹約と資産運用によって「自由な人生」を手に入れようとしている。

とFIREムーブメントを紹介しておきながら、

早期退職(RE)で人的資本をゼロにするのは人生設計としてバカげている。

十分貯め、物質的な贅沢に興味が薄いんだからそれでいいんだって。

現代社会では、職業的な成功こそがもっとも確実な自己実現への道だというのに。

だから、そう感じない人がFIREを志すの!

早期退職(失業)はもはや、魅力的な人生の目標ではなくなっている。

いまだに多くの人が魅力を感じていますが。世間の動向を探るならSNSくらいチェックしなさい。
まるで頭の固い保守論客のような言説のオンパレードだ。
そして決め手は、

実際、FIREを達成した者たちは、自らがインフルエンサーとなったこの理念の普及を精力的に行っている。

これはそういう人が目立つというだけ。もちろん大多数のFIRE民は精力的に理念の普及になど努めていない。
一体何を根拠にこんな主張を展開するんだろうね?

と最後は批判が辛辣になってしまったが、ミニマリズム、FIRE、そしてBOBOSを絡めて持説を展開するあたりは実に興味深く、あくまで氏の「個人的な感想」であることを踏まえても、なお楽しく読ませていただいた。
FIREを考えている人は目を通しておくべき著書だろう。おすすめ。





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軽く盛ったご飯にウニを乗せ、少量の醬油、カラスミ、海苔をまぶす。薄~くスライスしたローストビーフを添えると抜群の日本酒の友。
お料理に興味のある方はこちらの記事をご参照ください。
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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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