解脱寸前と公言し旅に出て、解脱できなかった小池氏の「イワクつき」本を紹介します。


今日紹介するのは小池龍之介著「解脱寸前」。
え、あのイワクつきの……と反応された読者もいると思う。
実はこの本は僕のお気に入りのひとつで、今まで何回も読み返している。しかし「イワク」部分が気になって、今までは取り上げずにきた。
現在、僕自身が再度瞑想にはまっているのもあり、思い切って紹介してみたい。


まずは小池氏の紹介。アマゾンから。

1978年生まれ。出家名は空朴。東京大学教養学部卒業。月読寺(神奈川県鎌倉市)住職と執筆業を辞し、瞑想修行に専念している。『しない生活』(幻冬舎新書)、『沈黙入門』『もう、怒らない』『坊主失格』『いま、死んでもいいように』(いずれも幻冬舎文庫)、『運命とうまく付き合うレッスン』(清流出版)など著書多数。

東大卒の理論派僧侶。
著書「考えない練習」がベストセラーになったし、一時期はよく島田紳助氏の番組に僧侶として登場し異彩を放っていたから、記憶にある人も多いはずだ。

小池氏は自分自身がもう解脱が近いと感じ、この本「解脱寸前」を最後にインドへ発つ。
野宿をしながら瞑想の旅を続け、完全に解脱してから再び僕らの前に姿 をみせてくれる……はずだったのだが、なんと解脱に失敗。
すべては「妄想」であったと懺悔し、その後、本を上梓していない。
つまり「解脱前最後の本」であったはずの本書は、どうやら「本当に最後の本」になってしまったようなのだ。
この経緯に関しては本書に対するアマゾンレビュー欄で、「目覚めぬ人」さんが投稿してくれている。以下、関連する箇所を抜粋。

すでにご存じの通り、小池氏は瞑想を通じて訪れたヴィジョンを己の妄想と見抜けず、大変な勘違いをしていたと、懺悔しています。
その勘違いっぷりは壮絶で、小池氏は過去生ではあの「ディーバダッタ」だそうです。その上ディーバダッタこそが真の仏教を貫こうとした人で、小難しく論理的な仏教を作り、あまつさえ戒律まで変えてしまったけしからん仏教徒があの「ゴータマ・シッタールタ」なのだそうです。真のブッダがいて、二人ともその人の弟子だったそうな・・。
勿論、本人は妄想だったと、懺悔しています。ううむ、魔境とは恐ろしいものですね・・・。(この話は本にもなっておらず、数人の人に話ただけだそうです。しかし、インド瞑想紀行のなかで、このヴィジョン(啓示)をもとに記述した部分があるので全世界に向かって謝罪したそうです。)
座禅が極まってくると、己の望む妄想をヴィジョン(啓示)として見るようになるみたいで、日本の仏教にもこんな言葉が残っています。
「仏を見たら、仏を殺せ」
ある意味、小池氏の瞑想は相当なレベルに達していた証拠であると思います。それに狂人や廃人にすらなりかねない魔境からたった半年ほどで抜け出したのですから、何も絶望する必要はありません。むしろ天晴というべきでしょう。
(中略)
編集者なら絶対、本にしてもらうよう日参すべきです。笑いたい人は笑えばいいし、瞑想の参考にしたい人は大いに参考にするでしょう。この貴重で稀有な失敗談が、本になることを待ち望んでおります。

氏が結果的に解脱に失敗したため、一部の方、とくに日本の伝統的な禅を好み、伝統仏教のヴィパッサナー瞑想を疑問視するようなグループからこの本への風当たりは強い。
しかし僕は小池氏に多分に同情的だし、むしろ自身の弱さを吐露できる小池氏の勇気を高く評価している。
本人による懺悔がYouTubeで公開されているが、インドでは我々の想像を絶する体験をしてきたようだ。
紹介サイトから一部を引用。

放浪の途上で自らの弱さに気づいた。「人間という条件を超えて解脱するだろう」というのは、間違いだった。自らの状態を見誤って、おかしなストーリーを思い込んでしまったから、こんなことを言ってしまった。
未来のコトはわからないので絶対とは言えないが、多分解脱することはなさそう。自らの境地について、大げさなことを言ってしまったことに関して、頭を下げて懺悔する。
過酷な状況に曝されることによって、安定した環境では隠れていた自分の弱さに直面した。
性欲と異性を求める気持ちは、消えたと思っていたが消えていなかった。性欲が消えていることが相当な境地に達していることの証だと思うので、そのように(消滅したと)公言していたし、そう(性欲が消滅したと)思っていた。
天から与えられる戒めのようにエッチな妄想が浮かんできて、夢精をすること度々で、着替えもないのに衣服が汚れて大変だった。
野宿は最初のうちは楽しめた。公園などで寝袋を敷いていた。途中からは辛くなってきた。
妄言・妄想・境地の詐称に対する天罰なのか、ビリビリする強烈なエネルギーがあちこちから流れてきて、頭から腹部に刺さるように入ってきて、腹部に鉛の玉(塊)が入っているようで、瞑想状態に入れなくなった。そして瞑想できなくなることによって、野宿の苛酷な状況に耐えられなくなった。
汚い服で裸足で歩いていると、人からの社会の最底辺の人間として扱われ、非人道的な扱いを受け、大変だった。
野宿する場所が見つからないこともあり、苦労した。寝る場所が見つかっても、その土地の森の精霊に追い出された。
街に下りてきて、別の場所に移ったら、天罰なのか、今度は警察官がやって来て、職務質問をされ、追い出され、またまた大変だった。
腹部の鉛玉のようなエネルギーの所為もあって、痛い、しんどい、という感覚を追い払えず、自分の心は乱された。
自分の境地は、公言していたよりも、あるいは思っていたよりも低いところにあった。
瞑想のためにすべてを捨てたはずなのに、瞑想すらできないなんて、生きていても仕方ない。
海の側を歩いていた時に、大粒の涙を流して、泣いてしまった。 うまく行かないだけで泣いてしまう程度の悟り具合だった。
瞑想はできなくとも、自分の感情を冷静に観察する力は残っていたので、自分の境地を誤認したまま思い上がっているよりは、湧いてくる感情を認めて、未だ低い境地にいることの問題を解決しようと思い立った。
騙しているつもりはなかったが、「瞑想の初歩の悟り」と言ってもよい程度にしか悟っていなかった。悟りの境地の詐称について懺悔する。


さて、明日はこのイワクつき著作の本体から一部を紹介する。




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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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