人生で最高の「がっかり」を経験してきた。


僕の長男は高校3年生。自宅からさほど離れていない高校で、寮生活を送っている。
その高校で先日、フェスティバルと呼ばれる学園祭が開催された。

僕が高校生だった頃は文科系行事と体育系行事は切り離されていたものだが、最近は合体させて行う学校も多いらしい。
1日目は文科系イベントで、まずは開会式と各連合(1-3年生までが縦割りで連合を形成する)が事前に作成した「プロモーションビデオ」の上映。
その後、演劇と合唱。
2日目はダンス合戦と各種体育系競技。それらを含めたすべての総合点で優勝が争われる。
妻と僕は見学に参じ、大いに感動させてもらった。

学園行事を見に行っただけで「感動」は大袈裟? でも聞いてほしい。
フェスティバルは去年、一昨年の2年間、新型コロナ感染拡大のために開催できなかった。だから今回が3年ぶりの開催で、現在3年生の長男はギリギリ間に合ったことになる。
学校の名物ともいえるこの祭典に1度も参加できない可能性だって大いにあったのだ。
加えて我が家の長男は昨年までとんでもない問題児だった。
本人のプライバシーもあるので詳しくは書かないが、他校の不良から「会ってみたい」とお誘いがくるレベル。
特に中学生時代は家での荒れ方もすさまじく、妻は体調を崩し、毎週のように来る学校からの呼び出しには僕がひとりで対応した。
彼が立ち直る術を探る中、キリスト教系で、かつ寮がある高校を選び、束の間落ち着いたようにみえたのだが、平和だったのはほんの一時で、高校1年の終わり頃にはまた学校から呼び出し。温情が厚いことで有名なこの高校から自主退学を勧められることもあった。
親の目から見て「ようやく落ち着いた」と感じられるようになったのはここ最近の話で、だから彼が仲間たちとともに楽しそうに参加している姿をみるのは大いなる喜びだった。
さらに、僕はアーリーリタイアするまで開業医をしていた。
妙なところで生真面目な僕は、子供の行事のために医院を閉めるなど、とてもできなかった。
結果、子供たちの幼稚園、小学校時代の行事にはほとんど参加できず、妻が録ってくれた動画をみながら、「こんな具合に子供たちは育っていってしまうのか」と絶望感に襲われることもあった。
好きなだけ子供たちのがんばりを見に行けるようになったのは、6年前にアーリーリタイアしてから。
僕はこの生活が本当にうれしくて仕方がないのだ。

目立ちたがりやの長男は開会式で司会を務めていた。
髪は金髪。フェスティバルの期間だけ校則の規定が緩くなるので、前日に色を抜き、終了後その日のうちに黒く染め直すのが恒例とのこと。
その後、オープニングを彩るバンド演奏ではベースを担当。
途中、マイクトラブルで式典が中断したときは、ステージに駆け上ってアドリブ芸を披露し、会場を沸かせる。
大したネタではないのだが、それでも会場がこれだけ盛り上がるということは、友達といい関係が築けているんだなと目頭が熱くなる。
その日の合唱ではチーフ兼指揮者。翌日はダンス、騎馬戦、リレーに参加。
2日を通して大活躍で、親の贔屓目では息子の連合がダントツに思えたのだが、結果は残念ながら2位。
子供たちの熱気が感染していた僕と妻は心底がっかりし、帰りの車の中では、「審査結果に納得がいかない!」と不満をぶつけ合うことになった。
でも考えてみれば、こんな「がっかり」なら大歓迎だ。
コロナでフェスティバルが開催されない「がっかり」。
仕事が忙しくて子供の行事を見に行けない「がっかり」。
息子が起こしたトラブルで何度も学校に呼び出される「がっかり」。
立ち直ったかと思った息子が再度荒れ、退学を進められたり、進級は難しいと言われたりする「がっかり」。
そんながっかりを繰り返してきた僕ら夫婦にとって、今回のがっかりは本当に最高の「がっかり」だった。

冒頭の「感動した」は大袈裟?
まさか。言葉が足りないくらいだと思っている。





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そしてまたヨットの季節。昔の〇〇ヨットスクールのようなところではありませんが、それでもけっこうスパルタ。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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