懐かしいメンバーで酒を飲むと……


先週末、5人で酒を飲んだ。
5人なら飲み会、あるいは宴会といっていいだろう。となるとコロナ騒動が始まって以来、初めて宴会に参加したことになる(そして第7波にぎりぎり間に合ったことになる。セーフ!)。
メンバーは研修医時代にお世話になった先輩医師ふたりと、当時、一緒に病棟で働いた看護師ふたり。
新規感染者数も落ち着いていたし、普段から立場上、感染を警戒しながら暮らしている人たちばかり。さらに20畳くらいある個室(これホント)を予約したから、感染リスクはまずないだろうと判断した。
久しぶりの宴会は実に楽しく、一次会だけだったのに飲みすぎてしまった。

今回集ったメンバーで一緒に働いたのは30年近く前。
面倒見のいい先輩に恵まれ、よく飲みにつれて行ってもらった。
週に何度も飲みに出ることもあったし、大抵は午前様。一気合戦がすぎて看護師がつぶれ、救急車を呼んだことも。
しかもお金を払った記憶はほとんどないのだから、思い返せば滅茶苦茶だ。
今でもそんな家族のような職場ってあるのだろうか。まず、ないだろうね。
いい時代だったし、いい人たちに恵まれたと思う。

久しぶりの再会。最初の10分くらいは面映ゆい気持ちになるが、すぐに感覚は昔に舞い戻る。自分の老けた姿は自分では見えないから、気分は完全にその時代へ。図々しくも20代だ。
そして皆が同時に年をとっている以上、当時の序列が崩れることはない。
このメンバーでは僕は「永遠の下っ端」ということになる。

それなりの年になり、開業し、それを辞し、こうやって偉そうにブログなんぞ書いていると、それなりの人物と勘違いされるようで、手厚い扱いを受けることが増えた。
若者に教えを請われれば、アドバイスめいたことを口にすることもある(何様なんだろうネ)。
実際のところ、僕は大して成長してはいない。もちろん偉くはないし、大それた助言ができるわけではない。もっともらしいことを言うのが多少上手になっただけ。
とはいえ現実問題として、今の生活ではある程度敬われることが多く、逆にこちらが仰ぎ見る相手と付き合うほうが難しい。いつの間にかそんな境遇、そんな年齢になった。
しかしこのメンバーでは真反対だ。一瞬で下っ端へと舞い戻る。2階級特進ならぬ、2階級急降格。
これが不快かといえば実は反対で、僕の元来の気質が下っ端に適しているのか、なんともいえぬ心地よさが湧きあがって来る。
下っ端はいい。無責任でヌルくて快適だ。

「若い頃の内山はひどい絡み酒だったよな」
飲むたびに先輩医師に言われる。
当時はどういうわけかかなり鬱屈としたものを抱えていたから、身に覚えは大いにあるし、その一言で当時の感覚も如実によみがえる。
懐の深い先輩に甘え、安心して絡ませてもらっていたようなところもあるが、それも程度の問題。当時の自分の未熟さが恥ずかしく、しかし本音を言うと妙に懐かしくもある。
それにしても傲慢な医師であり、傲慢な人間だった。
よくここまで無事にやってこれたものだ(あ、いろいろ無事じゃなかったなかったんだっけ…)。

30年なんて本当にあっという間だ。皆、姿形はそれなりに老けたけど、言うことはあまり変わらない。
面白かった人は今も面白いし、物知りは物知りだし、天然だった人はずっと(輪をかけて?)天然のまま。
子供についての悩みを語りあった後、その子供たちがいまや自分たちが一緒に働いていた頃の年齢と大差ないことに気づく。
すると幼い子供たちが急にいっぱしの若者にみえたりもするし、逆にあの頃の自分たちがいかに未熟であったかに思い至ったりもする。
強烈な気づきの連続に平衡感が消え、感覚がぐるぐると回転する。これに酒の酔いまで加わるのだから、愉快すぎてわけがわからなくなる。
いい人たち、楽しい酒、美しい思い出。
これと比べれば、金で買える幸せや物質的な喜びなんて、本当にちっぽけなものだとつくづく思う。
人生万歳、と叫びたくなる。

なんだか妙なことを書いているなあ。
何日もたったのに、まだふわふわした感じが続いている。



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お弁当。
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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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