「自粛無効説」に反論する~新型コロナウイルス

あなたが自分の年収について疑問をもったとしよう。
まず比較するのは周囲の、同じような環境の人ではないだろうか?
トップエリートと比較してもしょうがないし、老人の年金支給額を調べる意味もない。
ヨーロッパや中国での平均年収と比べたところで、国際比較としてはおもしろいが、有用な資料とはなりにくい。
当たり前?
今、新型コロナウイルスを巡る報道では、この当たり前のことがなされない状況が続いている。

感染対策について、マスコミはやたら欧米と比較したがる。
EUでの所得補償がすぐれていること、あるいは、ロックダウン解除の基準が日本より明確であること。
比べることに意味がないとはいえない。
しかし、人種も文化も違い、税制も違い、さらには感染爆発を起こしてしまった国々との比較で、実効性のある教訓をえることはかなり難しい。
数々のバイアスを取り除いた上で、慎重に検討しなければならない。

比較するなら欧米ではなく、まずは韓国、そして中国であるべきだろう。
地理的、人種的に近く、いずれも第一波を抑えこめている。
それらの国々と比較すれば、日本の状況や改善点が容易に把握できる。
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フィナンシャルタイムズHP

今はこんな感じ。ちなみに対数グラフになっている。
日本は順調で、中国、韓国は新たに生じたクラスターを封じ込めつつある。
クラスターをその都度できるだけ早期に潰すやり方が、今後、東アジアのスタンダードになりそうだ。


前振りが長くなったが、ここからが本題。
一部SNS上では、ロックダウン不要論が根強い。
ロックダウンの定義にもより、人によって論調が微妙に違うようだが、単に人同士の隔離と捉えれば、議論の余地なく有効なはずだ。
人と人が直接的・間接的に接触しなければ、感染は起きないのだから。

ところがそれにも反対する人がいる。
じゃあ証明してみろ、できないじゃないか! と威勢がいい。
確かにパンデミックからまだ日が浅く、データの不備も多いから、科学的な立証は難しい。
でも、だから自粛は不要となると、そりゃあ無茶だよと思う。
自粛が嫌だという感情が先にきて、それに合わせて理屈をこねているんではなかろうか。

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これはロックダウン不要論者の間で最近はやっているグラフ。
ロックダウンを行ったイギリスと行わなかったスウェーデンで、感染者数の推移は変わらないじゃないか、というものだ。
だからロックダウンには意味がない、というわけだ。

この思考のどこがおかしいか、皆さんはもうおわかりだろう。
なぜいきなり西欧のイギリスと、北欧のスウェーデンを比べる必要があるのだろうか?

スウェーデン以外の北欧諸国ではロックダウンが行われている。
なら、それらの国々と比べてみればいい。
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スウェーデンは感染者数、死者数が飛びぬけて多い。
そりゃそうだ。
ちなみにスウェーデンに関するふたつのグラフは、ともに線形グラフになっている。

西欧諸国は北欧と比べ、ロックダウンの効果がでにくかった。
特にイギリスは、イタリア、スペインよりも悪い。
であれば主たる議論は、「なぜ西欧では北欧ほどうまくいかなかったか?」であるべきだ。

同じヨーロッパとはいえ、西欧と北欧とではライフスタイルや気候の差異は数多く存在する(はずだ)。
特にうまくいっていないイギリスを単独で引き合いに出してスウェーデンと比べ、ロックダウンには意味がないと結論づけるには、クリアしなければならないバイアスがいくつも存在する。
いきなり結びつけていいはずがない。
ましてやそれを、文化・環境・人種が違い、感染爆発が起きていない日本に当てはめるなんて滅茶苦茶だ。
しかもこの後実際には、イギリスの感染者は減り、スウェーデンは横ばいのまま。
人口当たりの新規感染者でスウェーデンはイギリスを抜くことになる。
https://ig.ft.com/coronavirus-chart/?areas=swe&areas=gbr&areasRegional=usny&areasRegional=usnj&cumulative=0&logScale=1&perMillion=1&values=cases
自粛無効論者たちは見て見ぬふりのようだ(あるいは本当に見えていないのかもしれない)。

自粛無効派の論拠としては、他に
「日本では非常事態宣言発出後、実効再生産数の低下率は加速していない」
という解釈がある。
これだけ聞くと、じゃあ非常事態宣言には意味がなかったの? という疑問が湧く。
しかしこれも実はトリッキーで、まず日本の実効再生産数の推移は正確なデータ化が難しい。
今でも少ないが、以前はPCR検査数があまりにも少なかった上に役所の処理能力が追い付かなかったから、実数がわかりにくいのだ。
それに日本の場合、非常事態宣言でいきなり自粛が始まったわけではない。
2月中から少しずつ始まり、3月始めに学校が閉鎖されると加速。
3月下旬の連休で一旦緩んだ後、都知事の発言で再び少しずつ強まり、3月29日、志村けん氏の死亡で一気に加速。
そしてその後の緊急事態宣言で、現在のかなり徹底してたものになった。
そこまで考えれば、実効再生倍率の推移と自粛効果には、何の矛盾も生じなくなる。
非常事態宣言に意味がなかったのではない。
それ以前からの自粛にも相応の効果があった、と考えるのが普通だろう。

自粛不要論者のコメントには、
「専門家委員会はこの事実を理解しているのだろうか?」
という疑問の投げかけも多い。
大丈夫、理解している。
僕やあなたが思いつくことは、とっくに検討済みだから心配しないでいい。


SNSによって、皆が自由に発言できるようになった。
もちろん、いいことだと思う。
しかし同時に、人々をミスリードしうる言説が容易に出回るようになった。
対策としては、ユーザーひとりひとりが利口になるしかない。

多くの素人がSNS上で、「専門家委員会は全然だめだ。俺のほうが正しい」と声高に叫んでいる。
簡単に真に受けないでほしい。
記されているデータにトリックはないか?
単なるポジション・トークではないのか? などを吟味する。
自分の主張をもっともらしくみせようと、線形グラフと対数グラフを使い分ける人もいるようだ(こうなると確信犯)。
いい頭の体操になるし、自らのメタ認知能を上げる機会にもつながる。

情報処理からバイアスを除くのは難しい。
ちなみに今世界で、人口当たりの感染者数が多いのはどの国かあてられるだろうか?
アメリカ? ロシア?
ブラジルと予想する人もいるかもしれない。

正解はというと、1位 カタール 2位 クウェート 3位 バーレーンと、中東の国々が占めているようだ。
かすりもしなかった人が多いと思う。
普段注目することの少ない国々だし、ほとんど報道されていないのだから当然だ。
意地悪な質問ではあったが、人によっては、「自分は意外とわかっていないのかも」と感じ、認知バイアスの強固な殻に、少しひびが入ったのではなかろうか?
僕らは自分が常日頃感じているよりも、ずっと「わかっていない」のだ。

自分だけわかったつもりになっているんじゃないかって?
もちろん、そんなことはない。五里霧中だ。
新型コロナに関してこのブログで主張しているのは、「専門家委員会をもっと信用しよう」ということに過ぎない。
自分の感覚と専門家委員会の提言とが異なる場合には、躊躇なく専門家の意見に従うつもりでいる。
レベルが違い過ぎる。僕がこれから一生感染症を勉強したところで、たとえば尾身茂氏に追いつける可能性はほとんどない。

多くの人命がかかっているのだ。
献身的に働いている医療従事者たちがいる。
僕なんぞにはなんの影響力もないけれど、一応は医師の端くれ。
軽率な発言や行動は、くれぐれも慎みたいと考えている。

土曜日 朝7時過ぎ 内山
週明けには全国で非常事態宣言が解除されることを祈りつつ。



IMG_4677.jpg

マスカルポーネチーズとフルーツの生ハム巻き。
子羊のナヴァラン。
できれば一昨日のブログに載せたかった(羊つながり 笑)。

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内山 直

2016年、47歳でセミリタイア。地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で、遺伝が50%。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってきます!

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