仕事をすれば報酬を与えられること、そして、成功すればさらに多くの利益を得られることは、一般に広く知られています。しかし、たとえ仕事をしなくても、リスクをとれば、その行為自体によって利益を得ることができるのだという事実は、あまり理解されていません。
リスクなど引き受けないで済めば、それに越したことはないでしょう。しかし、リスクを取る人がいなくなったら、世界経済は大変なことになってしまいます。そこで資本主義社会では、リスクを取った人には相応のリターンが与えられるようになっているのです。それについて、私たちにとって馴染みの深い、預金・債券・株式という、三種類の運用手段を例にとって説明します。
まずは、銀行預金。銀行にお金を預ける場合、私たちは決まった利息を受け取ることができますし、すぐに引き出そうが、数年間預け続けようが、こちらの都合で勝手に決めたり、変更したりすることが可能です。預け先の銀行が破たんすれば預けたお金を失うこともありますが、それでも一千万円までは、預金保険制度(ペイオフ)によって保護されています。このように銀行預金は非常にリスクが低いため、私たちは安心してお金を預けることができるのです。
次に、債券はどうでしょうか? 発行する側の国や会社は、利息として毎年一定額を支払うことを約束し、その期間が終わったときには元本(額面)をまとめて返済してくれるので、約束の期間保有し続けるのであれば、発行元である国や会社が破たんしない限りは、利息の分だけお金が増えていきます。ただし、その期日よりも前にお金が必要になった場合には、債券を市場で売らなければならなくなり、場合によっては、購入した時より安くしか売れない、すなわち、元本割れの憂き目をみることもあります。大ざっぱにいうと、債券は、いつでも損失なく現金化できるわけではないという点で、預金よりもリスクが高いというわけです。
最後に、株式を比較してみましょう。株を買うということは、その会社の出資者である「株主」の一人になることを意味します。会社の業績が上がれば、株価は上昇する傾向があり、買った時の何倍もの価格で売れることもありますし、逆にその会社の業績が落ちて株価が下がれば、出資したお金は目減りし、最悪の場合、ただの紙切れになってしまいます。さらに、債券は一定期間保有すれば元本が返ってくるのに対し、株式ではそのような期間の規定がなく、永久に元本割れの状況が続く可能性があるという点でも、よりリスクが高いといえるのです。
三種類の運用先のうち、株式、債券、預金の順でリスクが高いということが、おわかりいただけたでしょうか。もし、これらの運用手段から期待できるリターンが同じだったとしたら、わざわざリスクをとってまで、債権や株式を買う人などいるはずがありません。現実に多くの人がそのような運用をしているのは、債券、さらに株式には、そのリスクに相応する、より高いリターンが期待できるからなのです。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。