「宝くじが当たったら何に使うか?」 を聞けば、その人の幸福度が見えてくる。


随分前の話になる。
飲み屋のカウンター席でひとり、ぽーっと飲んでいたら(これが至福の時なのですな)、後ろのテーブル席から女性数人の話し声が聞こえてきた。ふりかえって見たわけではないので確かなことはわからないが、声の感じからすると僕と同じ40~50歳代だろうか。
ひとりの女性が年末ジャンボ宝くじについて熱弁している。どうやら以前、前後賞を合わせた賞金額が10億円に増額されたことに不満があるらしい。主な理由は「10億円もいらない。欲しいのはせいぜい3億円だから、額を上げて当選確率を下げられるのは困る」というもの。
おもしろい意見だなと思ったし、その女性の声がなんとも楽しげだったので、つい聞き耳を立てた。
女性の言い分をまとめると、こうなる。
宝くじが当たっても、どのみち仕事は定年まで続ける。最初の1億円はまずは家のローンを返済した上で、残りはパーっと使いたい。ディズニーランドを貸し切りにするなんていうのもいい。
残りの2億円のうち1億円は老後の資金としてキープし、1億円は自分と旦那の実家に半分ずつプレゼントする。
それ以上のお金は不要だし、もらってもかえって困るというのだ。

聞いていて、ほおと感心した。まず「3億円で十分。10億円もいらないしかえって邪魔」という意見がおもしろい。世の中、お金はあればあるほどいいと思っている人が多い中、こういう考え方ができる人は珍しいのではないか。
実は幸福学の研究により、ある程度以上の資産は幸福度を上げないことがわかっている。
この女性の言う通り「あったって仕方がない」のに加え、管理が面倒だったり、失う恐怖が生じたり、あるいは取り巻きができて成熟した人間関係が築きにくくなったり、といったことが理由として挙げられている。
またお金は物よりも経験に使ったほうが、そして自分よりも人のために使った方が幸福度を上げるとされている。つまりこの女性の「ディズニーランドの貸し切り」、「両親にプレゼント」という一見豪快にみえるお金の使い方は、高級車やブランド物の装飾具を自分用に買うよりも幸福につながる可能性が高いのだ。
まさに幸福学のデータに沿ったお金の使い方と言える。
女性はデータを知った上でこのような結論に達したのではなく、自然にそう考えるようになったのだと思う。雑多な情報や固定観念に左右されることなく、自分の心に素直でいることによって、幸福のあり方を自然に把握できる人なのだろう。
そう考えれば話す口調がなんとも楽しげなのも合点がいく。
研究により、人の幸福度のうち50%は遺伝的要因で決まるとされている。40%は「感謝の気持ち」「親切な行い」「満喫する態度」といった、その人の行動パターン。
「資産」「収入」「社会的地位」「容貌」「教育」といった環境的因子が幸福度に与える影響は、たった10%程度しかない。
(ちなみに自著『4週間で幸せになる方法』は、幸せの40%を決定づける『行動パターン』を徹底して改善することを主眼としている)。
きっとこの女性は、「幸福になる遺伝子」に恵まれたタイプなのだろう。さらにそれによって行動パターンまでも、自然と幸福に直結する様式になっているようだ。女性の容姿や資産のほどは僕にはわからないが、たとえその手の環境的因子が最低だったとしても、100%のうちの90%はすでに手に入れていることになる。
彼女のような発想ができない人がいくら収入を増やし、社会的地位を高めたところで、幸福度においてはとても太刀打ちできない。
異論もあるだろうが、これが現時点での学術的な定説であり、僕には感覚的に納得できる。

その女性はひとしきり話した後、
「なんにせよ、宝くじなんて当たらないんだけどね」
と言って、高らかに笑った。
ほれぼれするような、素敵な笑い声だった。



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コーヒーブレーク。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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