戦前と戦後とで、いろいろなことが変わった。変わったようで変わらないこともあるが、変わったことのなかで私が素晴らしいと思うことのひとつは、世の中に不美人がいなくなったことである。
スタイルがいい。動きがいい。色が黒ければむしろ積極的に焼く。グラマー。ファニー・フェイス。ニキビの魅力。ハスキー・ボイス。素敵な悪女。蛙に似た女のモデル募集。
ということになれば不美人なんかいやしない。だから女はみんな闊歩する。エンゼル・フィッシュもハコフグもあるものか。アンパンのヘソという渾名の美人が主演銀幕女優となる。女に関していえば、“昔はよかった”とは絶対に言わせない。これは革命ではないか。女はみんなシアワセを態度で示せるようになった。
(山口瞳『男性自身』傑作選 中年篇 新潮文庫)
連載されたのが1961年だから、ここでいう35歳は1926年(大正15年)生まれ、生きていれば現在96歳、25歳は1936年生まれで、今は86歳だ。35歳の江分利と30歳の連中とは、どこかが少しちがう。30歳の連中と25歳までの新人たちにも、気質的に断層がある。若い人たちは、よくもわるくも自己中心である。江分利たちには「一将功なって万骨枯る」みたいなところがある。すぐ万骨になりたがる。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。