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“人の脳には、食欲と同じく、関係性欲求の本能も強く備わっています。他人とのコミュニケーションを本能的に欲します。実は、これが現代においては、別の問題を生み出します。
本能は、ブレーキよりもアクセルが強いものです。
たとえば食欲。狩猟採集時代は食料の確保は命がけでした。当時ならば、飽くなき食欲は有益に働きます。ところが、飽食の時代では、食欲が作動しすぎる傾向があります。なぜなら食欲のレベルは、狩猟採集時代の生活に見合ったレベルに設定されているからです。強い食欲を備えていればこそ、危険な狩りにも出ようものです。
現代の豊かな生活は、脳にとっては想定外な環境変化です。本能を我慢することは難しいものです。だからこそ「本能」なのです。当然、食欲は暴走します。その結果、現代特有の病である「生活習慣病」が生まれます。
関係性欲求についても同じことが言えます。今ではEメールやネットを通じて、容易に他人とつながることができます。しかし、この本能もブレーキは脆弱です。その結果、新型現代病「電脳習慣病」が成立します。
常に人とつながっていないと不安、すぐに返事が来なくては不安――。気づけばスマホ依存症やネット依存症に陥ってしまいます。
生活習慣病は、今では社会的によく認知されています。ダイエットや運動で対処する人が増えてきました。治療薬も開発されています。一方、電脳習慣病への対応は、まだ遅れています。そもそも当人が、自分が「病気」であることを認識していることが少ないようです。“
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。