「忙しい」は錯覚にすぎない
(前略)
今日はとりあえず、忙しさを消し去るための簡単な方法を紹介する。
残念ながら、ポケットから未来の便利な道具が出てくるわけではない。その方法とは、「基本的に人間は、一度にひとつのことしかできない」という現実を、きちんと認識するということだ。
もちろん会話を交わしながら車を運転したり、音楽を楽しみながら掃除をしたりすることはできる。でもそれは、ふたつのうち少なくとも一方が容易で、集中力を必要としない行為である場合に限られる。
テニスをしながら、原稿が書けるだろうか?
ステーキを焼きながら、子供の勉強をみることは?
もちろん、できない。
どんなに忙しくて、やらなければならないことが山積みだったとしても、僕たちは基本的に、一度にひとつのことしか片づけられないのだ。
僕たちが忙しさを嘆く時、ほとんどの場合、頭の中に「しなければならないことのリスト」を積み上げ、それによって苦しめられているにすぎない。
でも、できることがひとつしかないのなら、頭の中でリストを積み上げる意味なんて、まるでないことがわかる。スケジュール管理はあなたのスマホや手帳に任せておけばいいのであって、頭の中で何度も呼び起こしては、自分にプレッシャーをかけ続ける必要などないのだ。
それがしっかりと腑に落ちれば、「忙しい」という概念はほぼ消滅することだろう。
そうは言っても中には、
「俺は今日の昼までに、書類をまとめた上で、顧客のところにも寄らなければならないんだぞ! 忙しさが錯覚だなんて言われても、納得できないよ!」
と悲鳴交じりに反論する人もいるかもしれない。
でも、それは断じて違う。
すべきなのは、混乱に陥って時間を無駄にしたり、仕事の能率を落としたりすることではなく、はっきりと優先順位をつけた上で、ひとつひとつ全力で当たるということだけだ。集中すれば両方とも午前中にすませられると判断すれば、そうすればいいし、どう考えても無理だと思えば、頭を下げてでも、どちらかを午後に回すしかない。
そんなわけにはいかなかろうがなんだろうが、それしか方法はないのだ。
余計な思考でいたずらに心を乱すのをやめ、当面の課題だけに集中することができれば、ストレスはどんどん減っていくし、仕事が進むペースだって今までよりも早くなることだろう。
(中略)
というわけで今日は、先々の面倒なスケジュールを思い起こし、それによって苦しんだりしないですむように気をつけてほしい。頭の中で「しなければいけないことのリスト」が膨れてくるのに気づいたら、それが暴走をはじめる前に、やさしく自分に囁いてみよう。
「今やれることはひとつなんだから、先のことまで想像したって仕方がないさ」
現代人が常日頃から抱いている感情、「忙しい」は頭の中で生じる妄想にすぎない。
このことが納得できれば、やらなければならないことの量は同じであっても、日々はずっと優雅なものになるだろう。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。