「4週間で幸せになる方法」という本を数年前に上梓したこともあり、本ブログでは幸福に関する名言を紹介している。
今日はチョコラBBドリンクのCMコピーから。
“世の中、バカが多くて疲れません?”
若い人は知らないかもしれないが、1991年放送のエーザイ「チョコラBBドリンク」のCMで、女優の桃井かおりが画面の中から視聴者に向かって「世の中、バカが多くて疲れません?」と、持ち味である気だるい調子で語りかける。
これが視聴者からのクレームを受けて「世の中、お利口が多くて疲れません?」に変更されることになった。
とはいえ、クレームの数は決して多くはなかったらしい。逆にこのコピーは多くの人の熱い支持も得ており「この程度のユーモアも解せないなんて、世の中、本当にバカが多い……」との嘆きが多く聞かれることとなった。
さて、ここで考えたい。
世の中、本当にバカが多いのだろうか?
もし世の中の半分が利口で、半分が馬鹿だとする。
であれば、このコピーを耳にした後、半分の人が、
「本当だよな」
としみじみうなずき、残りの半分は、
「バカですいませんね!」
と開き直るか、「失礼な!」と苦情の電話のひとつも入れたくなるということになる。
でも、どうやらそうはならなかったらしい。
大多数の人は、
「バカが多くて疲れる」
に大いに共感したらしい。
ということは、世の中は多くの利口な人と、ほんの一部のバカで成り立っているのか?
いやいや、そうしたらすでにこのコピーの「世の中、バカが多くて」と矛盾してしまう。
となると結論はひとつ。
「世の中の多くは、バカが多くて疲れると感じ、さらに自分は多数派であるバカ組ではなく、少数の『利口組』に属する」
と思っていることになり、これは大いなる矛盾と言えよう。
種明かしをすると、人は実際よりも自分のことを有能だと勘違いする傾向があるのだ。
たとえば運転技術。アンケートをすると、多くの人が自分は「かなりうまい方に属する」と答えることがわかっている。
あるいは共著論文を書いたことのある研究者に、自分の働きがどのくらいの割合を占めるのかを聞いてみる。平均的な4人チームの場合、おのおのが自己申告した功績を足すと140%にもなった。
もし各自が自分の功績を正しく把握することができるのだとしたら、言うまでもなくこれは100%になるはず。学者という、論理的考証に慣れた人種であっても、平均で4割も自分の功績を高く見積もっていることになる。
これは居酒屋でのサラリーマン同士の会話に顕著に表れる。
例えば、「本部はわかってないよ」という愚痴。
酔いが回ってメートルが上がると、ついには、
「会社は俺たちでもっている」
とまで言い出したりする。
もちろん彼らには彼らの言い分があるのだろうが、多くの場合、これは錯覚だと考えてよさそうだ。
“自分は自分で思っているほど利口ではなく、世の中は思うよりバカばかりではない。”
そのようなバイアスをきちんと理解することによって、日々のストレスを大いに減らすことができるのか、あるいは逆にストレス発散の場を失うことになるのかはわからない。
でも、「世の中はバカが多くて、自分は少数の利口組に属するなどという思い込みを、なんの検証もなく信じ込むようなバカにだけはなりたくないものである」とわかったつもりで呟いて、今日の記事はおしまい。
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