昨日のブログで、僕は新型コロナウイルスについてこう書いた。
“人種、免疫、BCG接種といった要素が影響している可能性は否定できないが、今のところそれを示唆するはっきりしたデータや医学的知見はなく、また、それなしでも十分に説明可能である。”
今日は僕がBCG接種の効果について否定的な理由を、もう少し詳しく書いてみる。
まず、BCGの接種状況。

欧米で爆発的に感染が広がった1カ月前にこれをみれば、関連がありそうに見えたかもしれない。
しかし今や、感染爆発の中心地は南米になっており、すでに説得力を失っているように思える。
特にオーストラリア、ニュージーランドはBCG非接種国なのに成功している。
初期の封じ込めに成功した印象があるが、両国とも一時は(人口当たり)日本の最悪期の倍以上に当たる新規感染者が報告されている。
そこから感染爆発へ向かうのではなく、うまく沈静化させた。
BCG非接種国にもかかわらず、ほぼすべてのBCG接種国以上にうまく鎮圧できていることになる。
イスラエルからは否定的な報告が。
以下、山中教授のブログより。
http://www.covid19-yamanaka.com/cont4/23.html“BCGワクチン接種国(特に日本やロシア株を用いている国)では、新型コロナウイルスの感染者数、死亡者数が少ない傾向がみられる。イスラエルでは1955年から82年まではBCGワクチンが推奨されており、90%以上の接種率であった。一方、82年以降は、結核蔓延地域からの移民にのみBCG接種が行われている。今回、1979 から1981年生まれ (39-41歳) の3064名と、1983 から1985年生まれ (35-37 歳)の2809名においてPCR検査を実施したが、陽性率は11.7%と10.4%で有意差が無かった。それぞれの群で重症化例はそれぞれ1例であった。今回の解析からはBCGワクチンの効果は確認できなかった。”
僕もこの報告を5月15日のブログで取り上げている。
ドイツの状況を持ち出す人も多い。
東ドイツはBCGワクチンのソビエト株を、西ドイツは西欧株を使用し、1998年に接種の義務付けを中止している。
旧東ドイツ地域で感染率が低く、旧西ドイツ地域で高いのは、この差によるのではないかというものだ。

ちなみに下記が冷戦時の地図。

確かに感染状況は、旧西ドイツ地域で悪い。
しかしこれはBCG接種の株の違いを持ち出さなくても十分説明がつく。
旧西ドイツ地域は旧東ドイツ地域と比べ、
・ 人口密度が高い
・ 海外との往来が多い。特に海外のスキー場から帰国した人々から感染が確認されている(給与水準の低い東部ではこのような報告はあまりない)。
・ 人口当たりの感染者数が多いフランス、ベルギー、オランダに接しており、間にスイスを挟んではいるがヨーロッパでの震源地であるイタリアに近い。
ちなみにスイスでも南部で感染爆発が起きたが、これはイタリアに隣接していて人の往来が多かったから。
南部以外ではBCG接種がなされていたわけではない。
ドイツでも南部のバイエルン州とバーデン=ヴュルテンベルク州で患者数が多い。
これらはBMW、シーメンス、ダイムラー、ボッシュなど世界的に有名なメーカーを有する大変豊かな州だ。
日本でも人口密度が低く、海外からの観光客が少なく、大都市から離れた東北、中国地方では感染者が少ない(その最たるものが岩手県)。
ドイツでもまったく同じ。人口が多く、他国との往来が盛んな旧西ドイツ地域、特に南部の州では感染者数が多くて当然だといえる。
ポルトガルとスペインも話題になっている。
西ヨーロッパでは珍しくBCG接種が推奨されているポルトガルでは、隣国のスペインと比べ、感染者数、致死率が低いというもの。
これもBCG接種抜きで、しかも2行で説明ができる。
なぜスペインの感染者数が多いのか? → イタリアと接しているし、観光客も多いから。
なぜスペインの致死率が高いのか? → 医療崩壊が起きたから
ちなみにボルトガルの人口当たりの感染者数、死者数ともに、BCG接種が行われていないデンマークやオーストリアより多いことも付け加えておく(致死率は大体同じ)。
またNHKの報道によると、オランダのラドバウド大学のミハイ・ネテア教授のチームはBCG接種の効果を調べるため、医療従事者を対象に臨床研究を始めている。
ワクチンを接種したグループと接種していないグループに分け、感染の割合などを分析するのだそうだ。
接種により短期的に免疫力が上がる可能性はあり、うまくいったとしても驚くことはない。
しかしBCG接種国で感染が広がりにくいのが事実だとしたら、免疫力が上昇した状態が接種後数十年続かなければならない。
BCGワクチンの効果はそもそもの結核に対してさえ、10~15年程度とされている。
論理的説明、実証ともに、大変難しいと言わざるをえない。
パンデミック初期において、感染者が先に出たのは日本や韓国なのに、欧米があっという間に追い越していったから、「何かあるはず」と感じるのも無理はない。
しかし昨日書いたように、生活習慣、三密の回避、クラスター班の活躍、肥満度の低さだけで十分説明ができてしまう。
医療水準の高さは言うまでもない。
そんな中、BCG接種をことさら重視する理由がよくわからない。
以上、僕がBCG接種はコロナには効果がなさそうだと考える理由を書いた。
「BCG接種の効果などありえない」ではないので、そこは理解してほしい。
しかしその見込みはあまりないし、あったとしても長期的な効果は低いはず、とはある程度確信している。
(そう考えないと、日本とドイツとの致死率があまりかわらないことの説明がつかないことは
昨日書いた通り)。
(2020年9月6日。内容と違うので、原題「BCG接種はコロナに効果なし、と僕が考える理由」からタイトルを変更しました)

バナナとピーナッツバターのサンドイッチ。
子供たちがパクついていて、うまそうだなあと思ったが、さすがに僕は手が出ず。
脂質と糖質の塊だ(苦笑)。